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no.011 ★★★アイアンマンコリア完走記  2002.8.25  by SW

『真っ白な屋根のテントの中でウエットスーツを着たまま寝かされている人がいる。ピクリとも動かないけど一体誰だろう?えっ、うそー私なの?・・・』
少しウトウトしたと思ったらまたもやこんな夢で起こされたレース当日の午前3時。そういえばこの一週間は「よくもこんなに」と言えるほどの悪夢を見てきた。バイクケースを開けたらタイヤがすべてパンクしてたり、ウエットスーツのファスナーが上がらなかったり・・・。

気が小さい自分にあきれ果てながら、もうとても眠れそうにないのでそろそろと起き出す。同室の人のじゃまにならないよう、真っ暗な中でレース用のウエアに早くも着替え、HRMもつける。数値を見てびっくり、すでに心拍数は100を越えている。ただ立っているだけなのにいつもの倍だ。「あ〜どうしよーこんなんで本当にだいじょうぶなのだろうか。これじゃ会場入りもできないよー。」とにかく落ち着かないと・・。もう一度横になってストレッチを念入りにした。そのうち同室の人たちが起きだしてきたので、食事をとる。日本から持ってきたミニ大福と八つ橋、それからナッツバー。オレンジジュースとアミノバイタルで流し込んでそれでせいいっぱい。親切な同室の人が「味噌汁もご飯もあるからどうぞ」と勧めてくれたがとても食べられないので、お礼だけ言って一人もくもくと出かける準備をする。

会場まではバスで5分。まずはナンバリングだ。トライアスロンが初めての私にとってはそれだけでも緊張。両腕両太ももにマジックで書いてもらっている間もコチコチになっていた。そしてトランジッションエリアの自分のバイクのところへ行き補給食とドリンクをセッティングする。ツアーのスタッフの人がポンプを持って回ってくれていたので私も空気を入れてもらう。「これでバイクはOK、次はいよいよスイムの準備だ」周りを見るとまだ誰もスイムキャップもかぶってないし、ウエットも着てない。それでも気があせっている私はスイムキャップとゴーグルをつけワセリンを塗り始めた。神野さんに教えていただいたように首周りと脇の下から肩までたっぷり。塗りすぎて腕のナンバーが消えそうになってしまう。いけないいけない。まだあまり人がいないうちに入水チェックに行く。

前日試泳した時は冷たい水に浸かって足がつかないことがわかるとパニックになってしまい,10メートルも泳げずすぐ引き返し岸にいた人にひっぱりあげてもらう始末。そのあと何とか気を取り直して数百メートルだけブイにつかまりながら泳いだものの、全く自信喪失していた。カナヅチ状態で水泳を習い始めてまだ2年、温水プールでしか泳いだことのない私がアイアンマンにエントリーしてしまった・・と後悔するも時は遅し。スイムでリタイヤの可能性がますます大きくなっている。「神野さんにあれだけ念入りにメンテしていただいたバイクに乗れなかったらもう会わせる顔がない・・」悲痛な思いで入水チェックを済ませ、最後尾に立ちスタートを待つ。膝がガクガクしてきた。すると鉄人歯科医さんがわざわざ後ろまで来て激励の言葉をかけて下さる。それにも「はい」と返事をするのがやっとだった。

いよいよスタート。パニックにならないようにゆっくりゆっくり泳ぎ始める。水は冷たくないし、呼吸も整ってきた。黄色いブイを見ながらロープに沿って進む。向こうのほうでボートに乗った監視員が見てくれている。ちょっとロープにつかまって休んだらウエットをつけたライフセイバーが私を指さした。「そうか、なんかあったらあの人が助けにきてくれるんだ」それがわかると安心して泳ぐことに集中できるようになった。一周目が終わり、二周目に入ると少し度胸がついてロープから離れて前の人を追い越すこともできた。水を3回飲んだがパニックにならず岸にたどり着いたときは、もうどうしようもなくうれしくて泣いてしまった。泣きながら着替えトイレにいき、まだ泣きながらトップテンを飲みほしてバイクにまたがりヨロヨロ走り出す。

「とりあえず半分でも走れればまたガナスへ行けるよね」この安堵感が心拍数を安定させてくれた。あとはペタルをこぐことだけに集中でき、あっという間に60k,90kと進んでいる。バイクに乗ったまま補給のできない私はエイドに着くたびにバイクを止め、食べて飲まなければならない。時間はかかってもその都度しっかり食べるようにした。そして後半、ずっと涼しかったためトイレに頻繁に行きたくなる。トイレの表示がなく(ハングルではあったのかもしれないが)困ったが我慢はできないので民宿風の建物を見つけそこで借りることにした。バイクコースは道路中央の2車線を使用した周回コースであったので、止まる時は車の走っている車線を横断して路肩に寄らなければならない。バイクを止めて降りて走ってトイレに入った時はランニングシューズで乗っていてよかった〜と思った。結局そこのトイレは3回借りることに。3周回を終えて街中をスタート(ゴール)地点に戻って行く時はかなり疲労していてペースもよりいっそうノロノロであった。私がバイクを終える頃はちょうどトップの選手たちがゴールに帰って来ているところで、会場が盛り上がっているのがわかった。宮塚選手や小原選手がものすごいペースでランのラストスパートをしているのをバイクに乗りながら見ることが出来てうれしかった。時計を見るとまだ4時になっていない。「あとは全部歩いても制限時間内にゴールできる!」いっぺんに元気になった。

更衣室で着替え、フワフワした足取りでジョギングを始める。ランも周回コースだ。距離表示がないので時計も見ず、ひたすらトコトコ歩みを進めた。三週間前に以前から申し込んでいたウルトラマラソンに出た時、膝を痛めてしまったのでそれから一度も走っていなかった。「あの時の激痛がまたきたらどうしよう」と不安はあったが、もうここまで来られたのだからどんな痛みにも堪えてみせる・・もうすぐだ。リズムをつけて走る、走る!4周回が終わり、ゴールまであとちょっと・・のはずがゴール横を通り抜けてまたしばらく走らなければならないのがつらかった。

ゴールゲートが見えたときの感激、一生忘れない。

今回いろいろと私にとっていい条件(スイムで波がなかった、バイクトラブルがなかった、バイクもランも好きな周回コースであった等)が重なってくれたおかげで、初トライアスロンであったにもかかわらず、アイアンマンを完走することが出来ました。それでも私はまだこの夏にトライアスロンデビューを果たしたばかりの初心者であることに変わりはありません。スイムはもちろん、バイク、ランもまだまだ課題が山積です。これからはひとつずつじっくりと練習を重ねていきたいと思います。

こんなにも夢中になれ、感動を与えてくれるトライアスロン・・!
本当にすばらしいスポーツです!!