no.009 ★★★スイスアイアンマン完走?記 2002.7.21 by HIRO
初めてのアイアンマン挑戦は肉体だけでなく、まさに精神的に鉄人であることを要求された。

朝7時、昇りかけた太陽に照らされたチューリッヒ湖の湖面は穏やかに出迎えてくれた。水温22C、スタート後沖へ800M、右へターンした後、それまでとは打って変わってうねりがある。今年の宮古と同じくらいのうねりに翻弄されるが、まだまだ先は長いのでマイペースで淡々と泳ぐ。やはり3.8KMは長い、いつまでも終わりがないような気になってくるがなんとかスイムアップ。1:50、やはり遅い。予定より10分オバーだが気にせずゆっくりとバイクトランジット。当然ほとんどのバイクはすでに乗り手を向かえて、私のバイクが寂しそうにぽつんと待っていてくれた。
少しはバイクで挽回しようと思いつつスタート。26KM付近までは湖のほとりの平坦な道だが、その後徐々に丘陵を上っていく。はるかかなたのアルプスに雪が残る尖った山を望むコースはやはりスイスならでは。また、ベルをしきりに鳴らしながら応援してくれるのは放牧されているたくさんの牛達。その間の農道を走っていると、景色に見入ってしまいレースをしているのを忘れてしまうくらいだ。
60KM付近を過ぎるとだらだらとした上り、下見をしていない私はこれがいつまで続くのか不安になってくる。結局6KMほど上り続け、このコースの頂上へ、後は下りのみ。しかしここで雲行きが怪しくなり突然の土砂降り。気温は15度くらいか、めちゃくちゃ寒い、アームウォーマーだけでは凍えてくるくらいだ。下りで少しでも時間を稼ごうと思っていたが、怖いのと寒いのとで40KM以上出せない。下りきってから最後の山場、ハートブレイクヒル、1KMくらいの上りだが最後の300Mはシッティングでは上れない。自転車1台分がやっと通れるくらいまで応援の人々が沿道を埋めつくし熱心に声をかけてくれる。沿道で応援している妻のジャケットを奪いとりコースへ復帰、2周回目を目前にしてトップ選手にラップされてしまった。100KMをアベ25KMくらいでキープしてきたにもかかわらず、ほとんど抜くことができない。皆が早いのか自分が遅すぎるのか?
ヨーロッパがバイク王国であると感じるのは、走りのレベルはもちろんのこと、その環境にもあると思う。アイアンマンという大きな大会でバイクコースの規制が交差点のみでできてしまうのは驚きだ。メインの通りにはバイク専用道が完備されているため、車は通っているし、マウンテンバイクで普通に走っている人もいる、レースに混じって練習している人には軽く抜かれてしまう。
ここまでほぼ予定通り、ランに備えてあの6KM続く頂上まで景色を楽しみながら気楽に行こうと思ったのが悪夢の始まり。ここの天気は非常に変わりやすく、2週目は天気も回復し逆に暑さとの戦いになってきた。なんとか最後の上り頂上が見えてくる。あとは下るだけとホット一息もつかの間エイドでスタッフに止められる。よく聞くとフィニッシュと言っている、そしてなんと私のゼッケンには赤×。後で調べたところ155KMでタイムチェックがありその後、交通規制が解除されると書いてあった。その時私の時計は経過時間8時間43分。規制時間は8時間40分。なんと3分・・・・・・・絶句。スイムが遅いとは言え155KMアベレージ24.8KMで失格とは。レギレーションをチェックしていなかった私はなんと間抜けなことか。
呆 然自失状態で下るが、規制解除と共にコース案内なども撤去されているため、ゴールまでの道がわからない。何度か間違えながら(下りなので間違えると当然上らなければならない。)走っていると、やはりタイムアウトの人と出会い、そのおっちゃんは地元の人らしくトランジットまで先行してくれた。すでに事態ものみこめ、地元のおっちゃんとのツーリングもなかなかできることではないし、せいぜい楽しもうなどとのん気なことを考えながらやっとバイクトランジットへ到着。9:40経過。
バイクの撤去作業にかかろうとしていると、後から戻ってきた女性と、異様にデカイ男性がシューズを履いてランの準備、まさか走るの?と思って見ていると、レッツ ゴー ・・・・カモン?と言ってる。そうだよね、せっかく来たんだもんね、丸1日もかけて飛行機で。とランの準備をしてコースへ。ランコースでXゼッケンは3人だけだったのでこの時点で実質最終ランナー。しかし走り出したものの、完全に途切れてしまった気持がさらに身体全体を異常に重くする。
Xゼッケンの私には非常に熱い声援がかかる、ジョポネ、ヒロシマ、ナカタ、など訳のわからない応援も混じるが、途切れた気持も声援によってだんだんと元気が出てくる。しかしハーフを過ぎる頃には薄暗くなり、その気持も萎えてくる。追い討ちをかけるように雷が鳴り雨が降ってくる。脚もだいぶ重くエイドを過ぎても歩くことが多くなってくる。もうだめ、なんでこんなことしてるんだろう、記録も残らないのに。3周回目にフィニシャーズロードに入っていく選手と別れてまだもう一周、果たして自分はあの道を通らせてもらえるのだろうか、ゴールゲートをくぐれるのだろうか、もうやめようと幾度となく考える。しかし、私を覚えてくれていて周回ごとに ヒロシ ゴー ゴー と声をかけてくれるたくさんの人々、ゴールで15時間も待っていてくれる妻。 ここまできたという自分の意地。最後の周回は半分近く歩いたもののフィニシャーズロードが見えてきた。誰かに止められるかなと恐る恐るフィニシャーズロードに足を踏み入れる、スポットライトを浴びる。大音響でDJがジャポン、ヒロシ、コングラチュレーションと繰り返す。
私のアイアンマンは上記のような間抜けな結果となってしまいました。今回のアイアンマンでは、なぜトライアスロンをやっているのかということを考えさせられました。人からすごいねと言われるともちろん悪い気はしません、やっている以上記録も残したい、しかし正直なところなぜかわからない。ただ楽しいから、それだけだからこそやってるんだなと実感したのです。声援のなかで今も心に残っている言葉があります。
YOU ARE CRAZY, BUT YOUR SMILE IS REAL FINISHER. |